旧本田屋(明治38年築)。歓楽街の中ほどに建ち、現在、雑居ビル「明治館」となっています。
日本各地の近代建築探訪など
旧本田屋(明治38年築)。歓楽街の中ほどに建ち、現在、雑居ビル「明治館」となっています。
明日から大阪の天満屋ビルで開催する「まちかどの近代建築写真展」に関連して、ちょっとヨタ噺を。
巷で話題となっております、マンガ家楳図かずお氏の自邸、通称「まことちゃんハウス」の外観がこの度公開されましたが、皆さんご覧になられましたか? もっとドギツイ赤色を想像していたのですが、報道写真で見ると、結構落ち着いた赤色になっておりました。
アサヒコムの記事
http://www.asahi.com/national/update/0314/TKY200803140052.html
最初、この写真を見たときに、恐れ多くも「辰野式」を思い出してしまいました(笑)。「まことちゃんハウス」は素材も違うし、ストライプ幅も違うし、建物のデザインとか思想とか、とにかくもう全然違うのですが、町にあってこの紅白のシマシマは「辰野式」ではないかと思ってしまった訳です。
ちなみに、「辰野式」とは、簡単に言えば日本建築界のボスとして君臨していた建築家、辰野金吾が好んだ紅白ストライプ模様の煉瓦建築のことで、東京駅や旧日本銀行京都支店、旧日本生命九州支店など、各地に残っております。文化財に指定されている建物も多く、煉瓦建築といえば「辰野式」が代表的なものとなっております。
しかしながら、辰野金吾が「辰野式」の煉瓦建築を建てた当時、その建物は、きっと周囲の町並みから浮いていたと思うのです。商業建築ならば建物自体が看板のようなものですから、目立つのは大いに結構、紅白でメデタイと歓迎されたのかも知れません。ただし、周囲の人々の心象はどうだったか……。
さて、「まことちゃんハウス」ですが、これが住宅地の中にあるということが問題なのかも知れません。ただ、もし楳図かずお氏が建築家で、あちらこちらにこうした紅白ストライプの建物を建て、しかも力のある建築家だったとしたら。この紅白ストライプの建物は「楳図式」と呼ばれるのか(いや、そんなことはあり得ない)。
ここ最近、写真展の準備で煉瓦建築の写真ばかり見てきたので、「まことちゃんハウス」もそんな風に見えてしまったのかも知れません。
旧バンザイ清涼飲料水会社工場(明治35年築)。当時、外人向けのサイダーなどを製造していたといいます。その後、現在も宝製鋼の工場として現役です。
今週末からスタートする「まちかどの近代建築写真展 IN 大阪III」ですが、埼玉県川口市でも、一部この会期と重なる形で写真展を開催します。「まちかどの近代建築写真展 IN 川口」では、関東地方の建物を中心に展示します。
まちかどの近代建築写真展 IN 大阪III(第12回)
~現存する全国の煉瓦建築~(「海岸通建物語3」関連企画)
会期:2008年3月15日(土)~4月19日(土)
会場:天満屋ビル2階「お茶と雑貨のハaハaハa」
大阪市港区海岸通1-5-28 東展示室
時間:7:30~18:00 土・祝は11:00~18:00(定休日:水曜、日曜)
(但し、3月15日(土)は14時から、4月19日(土)は14時まで)
主催:お茶と雑貨のハaハaハa
企画:まちかどの近代建築写真展実行委員会
協力:近代建築探訪メーリングリスト
まちかどの近代建築写真展 IN 川口(第13回)
(「KAWAGUCHI39ART2008」関連企画)
会期:2008年3月22日(土)~3月30日(日)
時間:10:00~17:00
(但し、3月22日(土)は13時から、30日(日)は16時まで)
会場:蔵・浜田 埼玉県川口市本町1-11-24
TEL:048-222-2219(浜田接骨鍼灸院:※会期中の問い合わせ先)
主催:まちのこし集団 かわぐち塾
企画:まちかどの近代建築写真展実行委員会
協力:近代建築探訪メーリングリスト
旧長崎英国領事館(明治41年築)。長らく児童科学館として活用されていましたが、その後、野口彌太郎記念美術館として公開されています。
旧第一銀行京都支店(明治39年築)。辰野式の現存建築でしたが、残念ながら当時の建物は平成11年に解体され、平成13年にレプリカ保存で現在のそっくりな建物が建てられました。
旧家辺時計店(明治23年築)。以前は京都象嵌という会社だったのですが、現在は京都ダマシンカンパニーという名になっています。
旧京都郵便電信局(明治35年築)。昭和53年に、日本で初めてのファサード保存で外観が維持されました。現在、中京郵便局として使われています。
旧日本銀行京都支店(明治39年築)。現在、京都府京都文化博物館として、当時の営業室を復元し公開されています。三条通りは、近代建築の宝庫として有名です。
先日、滋賀県立近代美術館で現在開催中の「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」を見てきました。
滋賀県立近代美術館「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」
http://www.shiga-kinbi.jp/exhibition/exhibition_database/pressrelease/exhibition_07-5.html
ヴォーリズは、明治末から昭和半ばにかけて日本で活躍した建築家です。アメリカ生まれで、滋賀県の近江八幡の学校に英語教師として来日し、その後素人建築家として設計事務所を開設、関西を中心に日本各地の建物を設計しています。昭和16年に帰化し、一柳米来留となりました。また、アメリカの常備薬であったメンソレータムの販売元として近江兄弟社を起こし、キリスト教布教の一助としたりしています。
下記のページに、小生がまとめたヴォーリズの紹介があります。
http://www.jmam.net/b/zinmei/vories-h.htm
学生時代に京都で下宿していたのですが、関西で生活していると、ヴォーリズの建物はとても身近に感じられます。例えば、京都の大丸百貨店の入口上にある、羽根を広げた孔雀のデザインなど、アールヌーボーだなと思って見上げておりました。四条大橋西詰の東華菜館など、誰もの記憶に残るような建物もあります。ヴォーリズの商業建築は、基本的にはアールデコなのですが、息苦しいまでの細かいデザインが過剰とさえ思えるほどです。一方、住宅などは、スパニッシュで、いかにも品のよい洋館といった別荘風な建物が多く、親しみが持てます。教会や学校の建物も、各地に建てられています。
北海道から九州まで、全国各地にヴォーリズの建物があり、それが結構多く残っています。これは、ヴォーリスの建物が人々に愛されている証拠ではないでしょうか。
今回の「ヴォーリズ展」では、設計図面を中心に、建物の写真や家具、著書などが、広い展示スペースで広々と展示されています。
滋賀県立近代美術館での「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」は、3月30日(日)まで。月曜休館です。
なお、この後、「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」は各地に巡回の予定です。5月には福岡の西南学院大学博物館、夏には軽井沢町歴史民俗資料館、秋には大阪芸術大学博物館、そして来年春には東京の松下電工汐留ミュージアム。
「まちかどの近代建築写真展IN大阪III」開催に向けて。第23弾も、北海道江別の煉瓦建築です。
今村カトリック教会(大正2年築)。長崎ではなく、福岡県に鉄川与助設計の教会があることを知り、驚いて訪ねました。
「まちかどの近代建築写真展IN大阪III」開催に向けて。第22弾も、北海道江別の煉瓦建築です。江別は札幌近郊にある、煉瓦製造業の町です。