昨日、渋谷で木造2階建の民家が倒壊したというニュースがありました。築80年ほどの建物ですが「老朽化で自然倒壊したものと見られている」という報道でした。
さて、今年の5月、中国の四川省で大地震があり、その直後に書き始めた、書きかけの文章があります。なかなか結論が出せずに、ずっと書きかけのままとなっていたのですが、昨日の民家倒壊のニュースを受けて、これは発表しておかなければならないと思い、少し手直しをしてUPすることにしました。
中国・四川省大地震では数多くの校舎が倒壊し、生徒・学生たちの痛ましい状況が報道されました。
この報道を受け、「日本の学校は大丈夫なのか?」という声も多く聞かれました。朝日新聞の記事によれば、1981年以前に建設された、古い耐震基準が適用された公立小中学校の校舎が、全国で約8万棟。そのうち、改修済みが約2万7千棟で、残りは、耐震診断で危険と判定されたか、耐震診断自体を受けていない校舎なのだとか。
さて、ここでかねてよりの疑問なのですが、古い建物は即、危険な建物なのでしょうか? 時間を経過した建物は、当然、老朽化します。しかし、老朽化とは、配管や塗装などの設備面の劣化が中心ではないかと思うのです。もし、構造自体も老朽化するのだとすれば、町の建物は一定の経年ごとに建替えられなければならないことになります。つまり、古い建物は全て一掃し、常に新しい建物に建替え続けなければならないことになります。しかし、何か変ではないでしょうか。だって、古い建物の街並みは、確かに存在するのですから。
木造は別として、鉄筋コンクリート(RC)造の建物について考えてみたいと思います。小生が子供の頃(40年くらい前)、RC造の建物は、「永久建築」とか「100年持つ」と聞かされていました。その後、大人になってから、RC造の建物の寿命は50年とか、40年とか聞くようになり、「アレ?」と思っておりました。
設備面での劣化に対しては、適切な保守を行なうのは当然です。これは、何もRC造の建物に限ったことではありません。しかし、もし仮に、RC造の建物の構造に対して、経年係数のようなものがあるのだとすれば、これまでの考え方を根本的に考え直さなければならないことになります。建築の専門家の方にぜひお聞きしたいのですが、老朽化=危険という図式は本当に正しいのでしょうか。
適切にメンテナンスを続けていけば、建物は半永久に保つことができるのではないでしょうか。「老朽化」が危険なのではなく、「必要なメンテナンスを怠ること」が危険なのではないでしょうか。
もちろん、手抜き工事や、偽装設計などは、当然ながら論外なことです。そういったことを除外したうえで、真っ当に建てられた建物についても、「老朽化」即「危険」と報道され、それが世間で正しいことと認知されていることに、どうしても納得がいきません。古い建物が危険なのではなく、必要な手入れを怠った建物が危険なのです。
建築家の方々、建設会社や工務店など建築を職業とするプロの方々、どうぞ、この当たり前のことを公言してください。世の流れは、誤った認識によって誤った方向に向かいつつあるように思われてなりません。