通り側にベランダをまわしたこの建物は、いったい何の建物だったのでしょう。
同じ通りには、やはりベランダを付けた商家の建物もありました。
日本各地の近代建築探訪など
通り側にベランダをまわしたこの建物は、いったい何の建物だったのでしょう。
同じ通りには、やはりベランダを付けた商家の建物もありました。
平和堂看板店。ライオンの飾り、入口上の円弧を描く窓、右隅に小さくある円窓など、賑やかで楽しい建物です。
銅板葺の看板建築。3階建てに見えますが、どうやら3階部分はフェイクのようです。
西日本新聞8月26日の用語解説「ワードBOX」に、旧長崎刑務所が取り上げられています。
「視点’07ながさき=旧長崎刑務所、年内解体へ 見えぬ跡地の将来像 諫早市 「保存」「開発」ともに課題」
http://www.nishinippon.co.jp/news/wordbox/display/5104/
これを読むと、旧長崎刑務所は近隣住民のとっては「迷惑施設」でしかないようです。シロアリ被害、ぼや騒ぎ、痴漢出没などなど。しかし、これらの問題は、記事にもある通り、旧長崎刑務所そのものに起因する問題ではなく、旧長崎刑務所を15年間も放置し続けてきたことによる管理上の問題です。
地元が保存に反対するという構図は、全国各地で見られます。以前書きましたが、小樽運河保存の際も、地元は運河埋立賛成でした。妥協・折衷案でしたが、何はともあれ小樽運河が残され、今日の観光化した小樽があります。運河を残すことで、その後どのような展開があるかの想像図を描ききれずに、地元は反対したということなのでしょう。
旧長崎刑務所も、残すことで将来どのような展開がありうるかを、具体的に示す必要がありそうです。昨今、旧長崎刑務所のような歴史的価値のある物件は、観光資源としても有望なのです。
西日本新聞の記事によれば、旧長崎刑務所の今後のカギは「用途変更」のようです。確かに、刑務所の用途地域って、何だったのでしょう。刑務所機能移転後の用途地域の指定も、何だったのか興味があります。県や市は、この「用途変更」の権限で、旧長崎刑務所の保存を取引することができそうですネ。
今後の展開が何も決まっていないにもかかわらず、ただ解体だけが押し進められている現状は、本当に許しがたいです。壊してしまっては、取り返しがつかないのですから。
8月31日の市民フォーラムを期待しています。皆で知恵を出し合って、残した後の旧長崎刑務所の活気ある姿を思い描きましょう。
以前から気になっていたのですが、全国を旅していると、丘の上に白いパゴダが建っているのをよく見かけます。どうも、鉄道の大きな駅などから見える位置に建っていることが多いようです。例えば、札幌や釧路、熊本など。
パゴダは仏舎利塔であり、インドのストゥーパが原形です。日本には木造の五重塔や三重塔、多宝塔などの形で伝わりました。パゴダは、ミャンマーやタイなどに伝わった形です。
つまり、現在各地に見られる日本のパゴダは、それほど古いものではないということです。小生の仮説では、伊東忠太設計による大正7年築の名古屋市の日泰寺仏舎利奉安塔が最初ではないかと考えました。その後、昭和初期にいくつか建てられ、昭和30~40年代に各地に建てられたのではないかと考えました。
今回、日本のパゴダのリストを作ろうと思って検索していましたら、すでに「塔婆-現存塔婆と塔婆遺跡」というHPに、「南方式仏塔(パゴダ)」の詳細なリストが載っておりました。
このリストによると、明治44年築の静岡県袋井市の可睡斎護国塔が最初のようで、設計は伊東忠太です。リストでは、大正7年築の日泰寺仏舎利奉安塔は、覚王山仏舎利塔として掲載されています。
伊東忠太が日本に持ち込んだという小生の仮説は、一応正しかったようです。「日本のパゴダの歴史」なんて、どこかの大学で研究しているのでしょうか。建築学というより、仏教系の研究ですかね。
旧紡績工場事務所。1階と2階の間に、大の字をあしらった通気孔が並んでいます。
諫早の旧長崎刑務所ですが、去る8月18日より、とうとう解体工事が始まったとのことです。長崎放送の解体現場の動画は、見ているのが辛いです。
「“明治の刑務所” 取り壊し」(長崎放送(動画あり))
http://www2.nbc-nagasaki.co.jp/houdou/index.php?itemid=3379
「旧長崎刑務所の解体工事はじまる」(テレビ長崎)
http://www.ktn.co.jp/news/d070818.html#0002
「旧長崎刑務所の解体進む」(長崎文化放送)
http://cgi.ncctv.co.jp/news/news.php?month=M0708&day=19
先にお知らせした、「旧長崎刑務所の保存活用を考える会」主催の8月31日のイベントですが、地元新聞でも取り上げられました。ご都合のつく方は、ぜひお出でください。
「旧長崎刑務所の保存を 市民グループを結成」(長崎新聞)
http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20070824/05.shtml
旧長崎刑務所解体問題が、なぜ全国紙で取り上げられないのか、不思議でなりません。
平地呉服店(昭和8年築)。角地にアールを描く、スクラッチタイル貼りのアールデコ建築です。
旧芦品郡役所(明治36年築)。解体・移築し、現在、府中市歴史民俗資料館として活用されています。
社団法人日本建築学会のHPに、「建造物の評価と保存活用ガイドライン」が載っていました。今年の3月31日に出されたもののようです。素晴らしいガイドラインなのですが、PDFデータのため多くの人の目に触れる機会を逸しています。ここに、テキスト化した全文を掲載したいと思います(英文訳省略)。
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建造物の評価と保存活用ガイドライン
社会の営みのなかで人々が建設してきた建造物には、さまざまな価値が込められている。当初、機能的有用性によって計画された建造物は、やがて長期間使用されつづけるなかで、歴史的価値と文化的価値をもつようになってゆくし、それらの存在はわれわれの生活をとりまく重要な景観要素ともなる。
また建造物は、それを生み出した人々の理想が込められた貴重な社会資産であり、そこにはそれをつくりだすための技術・芸術的叡知が込められている。建造物こそはある時代の到達点を示すかけがえのない証人であり、最大の記憶装置といえるものなのである。こうした建造物を長く使いつづけることは、われわれの文化を継承し、次代へつなげる大切な行為といえよう。
建設活動が地球の環境に与える影響は大きく、多大なエネルギーが注がれている建造物を取り壊すことは、地球環境に大きな影響を及ぼす行為である。建築が短寿命であることは、単に社会資産の形成が遅れるのみならず、地球温暖化の原因である二酸化炭素排出、森林の破壊や大量の建築廃材発生などの、極めて深刻な問題を生んでいる。建造物を保存活用して長寿命化をはかることは、建設廃棄物の減少をもたらし、地球環境問題に対して重要な貢献となる。
建造物の保存活用を積極的に進めることは、われわれの技術・芸術・文化にとっても、地球環境にとっても大切なことといわねばならない。
建造物がもつさまざまな価値を多面的に理解し、それらの価値を将来にわたって高め、保存活用してゆく方途を求めることは、これからの社会に対して日本建築学会が果たすべき責務と考え、そのためのガイドラインをここに提唱する。
2007年3月31日
五つの基本的価値
(1)歴史的価値
建造物は、人類の活動の所産として、広く歴史のなかで価値を持っている。その価値とは、建設年代が古いことによって生じる価値を基本とし、現在までの時間的経過によって加えられたさまざまな価値を含む。そこには、伝統・歴史的様式が継承されており、社会のできごとの痕跡や個人の記憶が留められている。建造物が、巨大な記憶装置となっているところに見出される価値である。
(2)文化・芸術的価値
建造物は、人々の構想力と想像力の所産であり、そこには、社会と人々の生活が表現されている。それこそが、建造物の持つ文化・芸術的価値である。文化的価値とは、建造物に込められた生活や社会の姿に宿るものであり、われわれの社会総体の到達点を示すものである。芸術的価値とは、その時代の新しい美や表現、成熟した空間などの軌跡に宿るものである。
(3)技術的価値
建造物には、構造・材料、構法・施工、環境・設備に関する技術が用いられている。技術の発展は、過去の技術の積み重ねと技術開発によって生じるものであり、それぞれの建造物で用いられた技術の総体によって今日の技術が存在している。したがって、それぞれの建造物が持つ技術的な特徴を評価することで、技術の変遷と発展における建造物の位置づけを図り、価値を把握することができる。例えば構造技術では、古くから発展してきた木造技術、近代以降における煉瓦造、石造技術、鉄骨造と鉄筋コンクリート造技術の導入、さらに、建造物の耐震・耐風、耐火、高層化、大スパン化に伴う技術、などである。
(4)景観・環境的価値
建造物には、その周囲の景観や居住環境との関係で見出される価値がある。建造物が周囲の景観に配慮し、良好な居住環境の形成に寄与している点を評価して得られる価値である。例えば、建造物が街並みと調和し、あるいは、ランドマークとしての役割を果たしていることなど地域の景観形成に寄与していること、日照など物理的な居住環境の確保やアメニティの創造に果たしていることなどである。そのような建造物が保存活用され続けていくことは、景観・環境にとって極めて重要である。
(5)社会的価値
建造物は、地域社会の活性化やコミュニティの成立にとって重要な社会資産である。すなわち、あらゆる建造物には公共性があり、生活の基盤施設としての価値をもつ。建造物の用途・機能が社会に与える影響や、社会に対して果たしている役割に着目して建造物を評価する。さらに、地域社会の変化や地域の近代化のなかで建造物が果たしてきた役割も同じ視点から評価される。加えて、このような価値を持つ建造物を保存活用し続けることは、地球環境問題の解決に対する重要な貢献となる。
建造物の保存活用にあたっては、先ず、その建造物の価値を明確にしなければならない。そのため、この保存活用ガイドラインの五つの基本的項目に照らして、その建造物の特徴を明確に把握し、評価することが必要である。そこで確認された特徴こそ、その建造物の固有の価値なのである。そのため、保存活用にあたっては、その価値を尊重し、新しい計画においてもその固有の価値を失わないように注意し、改修にあたってもその価値がより明快に維持され、社会に享受される計画性が求められることになる。
日本建築学会では、この保存活用ガイドラインに準じた建造物の評価、さらには、その保存活用計画の立案への助言など、専門家が積極的に協力したいと考えている。
*ここでいう建造物とは、その存続が危ぶまれる状況にある保存すべき建造物である。
社団法人 日本建築学会
〒108-8414 東京都港区芝5-26-20
03-3456-2051
http://www.aij.or.jp/aijhomej.htm
歴史的建造物保存活用ガイドライン
検討特別調査委員会
委員長
鈴木博之(東京大学大学院教授)
幹事
内田青蔵(埼玉大学教授)
小林正美(明治大学教授)
委員
兼松紘一郎(兼松設計)
佐々木睦朗(法政大学教授)
長尾 充(文化庁)
西澤泰彦(名古屋大学大学院助教授)
初田 亨(工学院大学教授)
藤岡洋保(東京工業大学大学院教授)
藤田香織(首都大学東京准教授)
藤森照信(東京大学大学院教授)
和田 章(東京工業大学大学院教授)
千葉刑務所(明治40年築)。現役の刑務所として使われています。
諫早にある旧長崎刑務所の、保存・活用を考えるイベントが開催されます。主催は「旧長崎刑務所の保存と活用を考える会」。連絡先は、長崎県建築士会諫早支部(地建設計内)の栄田元信氏 (TEL:0957-24-0416、E-mail:motonobu@festa.ocn.ne.jp)。
以下、九州産業考古学会のHPよりの転載です。
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旧長崎刑務所の保存と活用を考える市民フォーラム
基調講演:高村雅彦准教授(法政大工学部)
パネルディスカッション:池田武邦氏(日本設計元社長)ほか
日時:平成19年8月31日(金)19:00~
会場:諫早市高城会館(長崎県諫早市高城町5-25)
これに併せて諫早図書館では8月28日~9月1日まで「山下啓次郎と旧長崎刑務所展」を開催しています。どうぞ足をお運びください。
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シンポジウムの開催日が、月末で週末の平日(!!)という、勤め人には一番難しい日程ですが、何とか駆けつけることができないかと思案中です。
(社)日本建築学会の全国大会が、この日まで福岡大学で開催されていますので、その後に挙って諫早にお出でいただければ良いですね。博多から特急で1時間半程度の距離ですので。
旧高岡銀行(昭和4年築)。現在、金沢文芸館として転用。
谷庄古美術店(昭和2年築)。隣の敷地ではショベルカーが動き回っていました。
旧加能合同銀行本店(昭和7年築)。武蔵ヶ辻の角に建つモダンな銀行建築です。この度、この一角が再開発されることになり、少し曳家して保存されるとのことです。
昭和30年代の建物か? コーナーがアールになった建物で、側面に飾りが付いています。
左半分の改装が著しいのですが、左官仕事の飾りがついていたようです。
外壁が覆われていますが、外せば何か出てくる建物ではないかと思います。コーナーに円筒を持ってきた、小生の大好きな建物です。
旧織田医院(昭和3年築)。塔屋が見えるようにアーケードを外せば、町のランドマークとなる建物です。